大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1831号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人遠藤利一郎上告趣意第一點について。

銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隠匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從ってそれらの物件の所有者がその保管を他人に託したとしても、その受託者を通じて間接にその物の保存につき支配關係を持續する限り、なお該物件を所持するものといわざるを得ないのである。そしてこの場合、その受託者が意思能力を有し責任能力を有するか否かは、もとより前示結論を左右するに足るものではない。

記録によれば被告人は原審公判廷において、「自分はその所有にかかる本件拳銃一挺及び指揮刀、並びに軍刀各一振を昭和二〇年四月頃(銃砲等所持禁止令施行前)から土屋千代方に預けていたのであるが、同二一年六月一五日同令施行後も同令及び同令施行規則による正規の手續を怠り、右土屋方に預けたままに放置し、うち拳銃一挺は同二二年四月頃から肩書自宅に持ち歸って、同年一〇月二六日頃まで所持していた」旨供述しているのである。右供述するところによるも被告人は判示拳銃その他の物件も銃砲等所持禁止令施行以來昭和二二年一〇月二六日頃まで所持していたものといい得るのである。しかも、原審は右被告人の供述と押收にかかる判示物件(昭和二三年押第一〇九〇號の一乃至三)の存在とを綜合して判示事実を認定したのであってこの原審の事実認定はその證據に照らし、これを肯認するに難くないのである。原判決には所論のような違法はなく論旨は採用に値しない。(その他の判決理由は省略する。)

よって舊刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野 毅 裁判官 齋藤悠輔)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例